2026.05.10 / ぶち上げインタビュー
【ぶち上げインタビュー】「劣等感を埋めるために、走ってきた。」——和モダンでリラクゼーション業界の常識を書き換える。株式会社TSUBOMIYA・松尾雄太さん

劣等感を埋めるために、ずっと走ってきた。
この記事の要点
- 01——経営する上で大事にしている価値観を教えてください。
- 02松尾さん:売上や店舗数を目標にして追いかけると、かえって苦しくなるな、と最近感じています。
- 03——起業に挑戦したいけれど、一歩が踏み出せない読者へ、メッセージをお願いします。
※ 人生ぶち上げch編集部が本文をもとに整理した独自の要約です。
劣等感を埋めるために、ずっと走ってきた。
大阪・本町。檜の香りに包まれ、白檀の香りが漂う完全個室のリラクゼーションサロン「つぼみや」。旅館を思わせる和の音楽が流れ、施術の前後にはお茶が振る舞われる。五感ごと癒されるような和モダン空間で、足つぼ・リンパ・ヘッドスパ・オイル・ストレッチ・整体まで幅広いメニューを揃えるサロンを運営しているのが、株式会社TSUBOMIYAだ。
2023年春に本町で1店舗目をオープンしたあと、堺筋本町店、心斎橋店と3店舗まで拡大。代表の松尾雄太さんは、理学療法士として10,000時間以上の臨床経験を積んだ、リハビリのプロだ。(以下、松尾さん。)
和歌山県出身。父親に勧められて始めたラグビーで県代表まで上り詰め、リハビリ専攻の4年制大学に進学。理学療法士として病院・クリニック・訪問リハビリで現場経験を積んだのち、コロナ禍が明けた後に独立した。開業直前に融資が下りないという想定外のピンチを乗り越え、和モダンを基調とした店舗展開でリラクゼーション業界に正面から向き合う経営者として歩んでいる。
プロフィール
会社名: 株式会社TSUBOMIYA
役職: 代表取締役
氏名: 松尾雄太(まつお ゆうた)
和モダンを基調とした、檜と白檀の完全個室
——まず、株式会社TSUBOMIYAの事業について教えてください。
松尾さん:大阪を中心に、和モダンのリラクゼーションサロン「つぼみや」を運営しています。完全個室で、足つぼ・リンパ・ヘッドスパ・オイル・整体まで一通り揃えております。
2023年の春に1店舗目を本町でオープンして、その後、堺筋本町店、心斎橋店と広げてきました。今はフランチャイズ展開も始めていて、1号店の契約が進んでいるところです。
——内装の写真を拝見しましたが、別荘かと思うほど洗練されていました。和モダンに振り切ったのには、どんな狙いがあるんですか?
松尾さん:最初に東京で参考にさせてもらったリラクゼーションサロンがあって、そこが和のテイストですごく良かったんです。その世界観をオマージュさせてもらいました。
——海外のお客さんも多いとのことですが、集客はどうしているんですか?
松尾さん:日本語・英語など多言語で広告配信して、誰でもネット上で予約まで完結できる動線を整えています。 リラクゼーション業界では、内装や広告にしっかり投資する経営者が少ないのですが、弊社ではそこに力を入れることで、海外からのお客様にも来ていただけるようになりました。
主体的に生きるために、独立した
草を抜けと言われて、素直になれなかった、若い頃の自分
——独立を決めたきっかけは、何だったんですか?
松尾さん:人に従うことが難しい、という自分の性質に気づいたんです。誰かが上にいる環境に、どうしても少し窮屈さを感じてしまう。だったら自分でやった方がいいかな、というのがきっかけです。
——具体的に、どんな場面で苛立ちを覚えたんですか?
松尾さん:今はもう特に何も思っていないんですけど、勤めていたクリニックの先生から「隣の公園の草を抜いてこい」と言われたことがあって。「なんで草を抜かないとダメなんだ」と思いながらも、ちゃんと抜くんですよ(笑)。若かったので素直に受け取れなかっただけで、今思えばあれだけ給料を払ってくれていた先生は本当に偉大でした。
——経営者として上に立ちたい、ということではなく?
松尾さん:主体的な人生を生きたかった、という感じです。何事も、自分で決めたい。「自分の人生のハンドルを、自分で握れているかどうか」。そこへの感度が、人より少し高かったのかもしれません。 会社員のままだと、自分で決めていない時間が少しずつ積み重なっていく。それが僕にとっては、思っていた以上にしんどかったんです。
開業直前、融資が下りなかった夜——震えた瞬間
物件契約済み、内装も発注済み。コロナ禍明けの審査は、想像以上に渋かった
——独立してから、これまでで一番きつかった瞬間は?
松尾さん:開業するときに、日本政策金融公庫(公庫)で融資を申請したら、融資が下りなかったんです。 コロナ禍が明けたばかりのタイミングで審査が厳しく、経営経験のない1年目だったこともあって。「ここは借りられるはずだ」という前提で動いていたので、融資が下りなかったときは本当に焦りました。しかも物件の契約はすでに終わっていて、内装の発注も済んでいる状況で、トータル1,000万円近くが必要な状況でした。
——どう乗り越えたんですか?
松尾さん:信用金庫で別途融資を受けられたので、何とかなりました。手元にも自己資金として1,000万円ほど用意していたので、最悪の場合でも対応できる見通しはあった。それでも、さすがに震えましたね。 「借りられるはずのものが借りられなかった」というショックが一番大きくて。お金の問題というより、前提が崩れた時の怖さ、というか。あの夜の感覚は、今も忘れていません。
「責任感」——理念に置いた、たったひとつの言葉
お客様への責任、スタッフへの還元の責任
——経営する上で大事にしている価値観を教えてください。
松尾さん:基本的な理念で言うと「責任感」ですね。来てくださったお客様にしっかりサービスを提供する責任。そのサービスで得た対価を、スタッフにきちんと還元する責任。そこを一番大切にしています。 派手なビジョンをたくさん語るより、一つの言葉に真摯に向き合う方が、自分のスタイルに合っている気がして。「責任感」という文字を軸に置いて、毎日の判断基準にしています。
業界の多くが業務委託雇用の中、正社員雇用にこだわる理由
——リラクゼーション業界では業務委託雇用が主流ですが、なぜ御社では特に正社員雇用にこだわりを持たれているのですか?
松尾さん:業界で業務委託雇用が多いのは、利益が残りにくいからなんです。1人あたりの生産性が上がりにくい構造なので、大きな報酬を出すのが難しい。だから業務委託雇用で採用するというのが業界の定石になっています。 ただ、安定した働き方を求めている人は正社員を希望することが多い。業務委託雇用だと当日キャンセルが出たりすることもあって、シフト管理が難しくなる。弊社では従業員の生活をしっかり守るために、正社員雇用にこだわっています。
——正社員雇用を大事にしたことで、何が変わりましたか?
松尾さん:シフトが圧倒的に安定しました。爆発的な売上はすぐには出なくても、人が辞めにくい。これが店舗ビジネスでは一番大きいと思っています。 店舗ビジネスって、人が離れていくと何も積み上がらないんです。集客もリピートも採用も、すべて「人が積み重なっているかどうか」で決まる。人を育てて、定着してもらえる環境をつくることが、長期的な成長につながると感じています。
——貴社の給与水準はどのくらいなんですか?
松尾さん:月給で20万円後半から30万円前半ほど。業界では高い方だと思います。他のサロンだと20万円前半、場合によっては10万円台後半というケースもある中で、弊社では1人あたりの売上に対して社会保険料込みで40〜45%を給与として還元しています。スタッフにとって働き続けやすい環境をつくることが、結果的にサービスの質につながると考えています。
——未経験者の採用も多いんですよね。
松尾さん:今日もちょうど2人、未経験の方を採用したところです。中には、SNSやYouTubeを見てから求人の応募をしてくれる方もいます。入社後の決め手は給与や福利厚生の条件であることが多いです。従業員の方には、条件面で満足していただいているケースが多く、嬉しいです。
「店舗数を追うと、不幸になる」——数字を追わない経営観
結果として店舗数がついてくる、が理想
——今後10年、20年で会社をどうしていきたいですか?
松尾さん:売上や店舗数を目標にして追いかけると、かえって苦しくなるな、と最近感じています。「結果として店舗が増えていた」「気づいたら売上がついてきた」という状態が理想で。 今描いているのは「インバウンドからアウトバウンドへ」という流れです。インバウンド(海外からの来客)で培ったノウハウを活かして、アウトバウンド(海外への出店)にも挑戦できると思っています。日本の外に拠点を持つ経営は、長期的に見て大きな価値があると感じています。
——店舗数の目標はありますか?
松尾さん:今のリラクゼーションで20〜30店舗、高単価のスパ業態で5〜10店舗、そのほかの業態も含めて合計100店舗くらいになれたら嬉しい、という感覚はあります。ただ、数字を追いすぎると本質を見失いそうなので、バランスを意識しながらやっていきたいですね。 「離脱率の低さ」と「お客様・スタッフの満足度」を日々見ていれば、結果はあとからついてくる。そういう順序を信じています。
「怒りが原動力」——劣等感を、走るエネルギーに変えてきた
現状と理想の乖離が、ずっと走らせてくれている
——経営者として、ご自身のことをどう捉えていますか?
松尾さん:見た目は穏やかに見えるかもしれないですけど、内側には結構「怒りの感情」があるんです。現状への怒り、自分の理想と現実がかけ離れていることへの焦り、みたいなものが常にあって。劣等感が強いタイプなので、それを埋めにいく過程で、いつの間にかめちゃくちゃ頑張っている、という感じです。
——ストイックですね。
松尾さん:「もっとできるはずなのに」という感覚がずっとあって、そこからエネルギーが来ている気がします。 メンバーをワクワクさせる明るいビジョンを掲げるタイプではないかもしれないけれど、「現状への怒り」と「劣等感」を燃料にして走り続けることはできる。たぶん、それが僕のスタイルなんです。
「起業しないと後悔するくらいの気持ちがあるなら、いい」——挑戦をためらう人へ
起業に向いているのは、どんな人か。
——起業に挑戦したいけれど、一歩が踏み出せない読者へ、メッセージをお願いします。
松尾さん:正直に言うと、起業はあまり気軽に勧められないんです。人生が大きく変わる可能性があるので。 ただ、「起業しなかったら絶対に後悔する」というくらいの気持ちがあるなら、踏み出してみてもいいんじゃないかと思います。そこまでの気持ちがないなら、無理にしない方が幸せかもしれない。
——松尾さんご自身もその覚悟を決め、起業されたのですね。
松尾さん:会社員のままだと、主体的に生きられない自分がいた。それがどうしてもきつくて、だから起業に踏み切りました。 会社員が悪いわけでは全くないし、人それぞれだと思います。ただ、僕の場合は「自分でハンドルを握って生きたい」という気持ちが、他のどの選択肢よりも強かったんです。
——最後に、フランチャイズ加盟を検討している方に向けて。
松尾さん:「インバウンドに興味がある」「海外進出にも視野を広げたい」という方と一緒に走りたいと思っています。 日本の人口は今後減少していく一方で、訪日外国人はどんどん増えている。その流れの中で外貨を取りにいく、長期的な目線を持っている方とぜひお話ししたいです。ご興味があれば、気軽にご連絡ください。
▼会社概要
会社名:株式会社TSUBOMIYA
代表:松尾雄太
事業内容:リラクゼーションサロン「つぼみや」の運営/FC展開
店舗:本町店/堺筋本町店/心斎橋店
取材・文:黒澤優一(株式会社One Rep)
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