2026.08.09ぶち上げインタビュー

ぶち上げインタビュー「面白いと思う方に、進めばいい」——コロナ禍の孤独が教えてくれた、"余裕"という幸せの設計図。株式会社ForTwo・高本実祐さん

「面白いと思う方に、進めばいい」——コロナ禍の孤独が教えてくれた、"余裕"という幸せの設計図。株式会社ForTwo・高本実祐さん

「意思決定は、いつも"面白いか、面白くないか"。ただ、それだけなんです」。

この記事の要点

  • 01株式会社ForTwo(フォートゥー)は、2022年に設立された、組織開発とAIの二軸を持つ会社だ。
  • 02だから起業するまでの期間を2年と決めて、親や周りにも宣言して、みずほ銀行に就職しました。
  • 03高本さん:社員さんにアンケートを回答してもらい、今の心の状態をデータで可視化することで離職を防ぎ、活躍を促進する組織成長のご支援です。

※ 人生ぶち上げch編集部が本文をもとに整理した独自の要約です。

「意思決定は、いつも"面白いか、面白くないか"。ただ、それだけなんです」。

株式会社ForTwo(フォートゥー)は、2022年に設立された、組織開発とAIの二軸を持つ会社だ。従業員のエンゲージメントを5つの指標でデータ可視化し、伴走支援する組織開発・HR事業。そして、リスキリング助成金を活用したAI研修と、AIのプロフェッショナルが企業に入り込む「AI-OPS」を展開するAI事業。掲げるビジョンは、「〇〇への余裕を作る」。その共同代表を務めるのが、高本さんだ。

これまで多くの人とのつながりに恵まれてきた高本さんは、人と会い、語り合い、時間をともにできることを、当たり前のように感じていた。だからこそ、人とのつながりが自分の幸せにとってどれほど大切なのか、深く考えることはなかった。

しかし、就職を機に大阪を離れ、香川で迎えたコロナ禍。人と会えず、誰かと時間を共有することもできない日々のなかで、初めて深い孤独を経験した。お金も時間もある。それなのに、「なんのために生きるのか」、「生きがい」を見失っていた。

そこで初めて気づいた。自分が幸せを感じるうえで、人とのつながりが何よりも大切だったということ。そして、人生を面白がるためには、“余裕”が必要だということだった。

その孤独の底で掴んだ"余裕"という一つの答えが、いまのForTwoのすべてを形づくっている。人とのつながりを何より大切にする高本さんに、その原点と現在地、そして見据える未来を伺った。以下、高本さん。

【プロフィール】

会社名:株式会社ForTwo(フォートゥー)

役職:代表取締役

氏名:高本実祐(たかもとみゆ)

「〇〇への余裕を作る」——組織開発とAIで、人の幸せを設計する

——まず、ForTwoさんの事業を教えてください。

高本さん:大きく二つやっていて、一つが組織開発、HR周りの事業です。いかに社員が生き生き働ける環境を作れるか、というところをご支援しています。もう一つがAIの事業で、AI研修で社員さんのスキルを高めて業務を効率化し、時間の余白を生んでいく。その余白を人間らしい部分に充てることで、仕事がもっと楽しくなる。そういう考え方でやっています。

高本さん:私たちの中では、AIの事業は「時間の余裕」を作るもの、組織開発の事業は「つながりの余裕」を作るもの、とそれぞれ位置づけているんです。

——ビジョンに掲げている「〇〇への余裕を作る」。ここには、どんな意味が込められているんですか?

高本さん:人の幸せって「したい」の実現、もしくは「したい」を実現できる状況であることだと思っているんです。「俺は海賊王になる!」みたいな強烈な「したい」じゃなくてもいいんですよ。例えば「一か月寝つくしたい」でも、「転職したい」でもいいんです。

でもこれらは感情だけが沸き起こっても、「お金稼がないといけないしな、、、」とか、「今仕事忙しくてそんな時間ないしな、、、」とか様々な面での余裕がないと、ネガティブな理由でその選択を取れないという状況になると思っています。

裏を返せば、何かしらの余裕がないと、「こんなことしたい」という感情は実現されないし、もっと言うとそもそも生まれてこない事もあると思っています。マズローの欲求階層でもありますが、人の幸せの最上級は自己実現じゃないですか。すべてが満たされた上で最後に出てくるのが自己実現なんです。その状況を手に入れるには、そのための土台の余裕が要る。「〇〇したい」という感情を生み出し、実現へ導くための余裕を生み出すこと、それが私たちの定義なんです。

高本さん:その余裕を生み出す要素は、大きく四つあると考えています。つながりの余裕、時間の余裕、お金の余裕、健康の余裕。この四つが、ForTwoが追い求めていく"余裕"です。

いまやっている二つの事業は、このうちのつながりと時間、二つの余裕を生み出す事業なんですよ。

失いたくなかった、家族の愛——「つながり」への渇望が生まれた幼少期

——高本さんの原点を知りたいです。どんなご家庭で育ったんですか?

高本さん:五歳までは一人っ子で、父は会社員、母はパートでした。本当にごくごく一般的な家庭で育ちました。経営者にありがちな壮絶な過去、みたいなものは全然ありません。

むしろ家族の仲が良すぎたんです。

私がいる中でじゃれ合う食卓での父母、同じ家に住んでいて毎日会っているのに毎日手紙を書いて投函する「家族ポスト」。決して裕福な家庭ではなかったのですが、そんなことは子供の私は感じたこともなく、ただただ幸せだと感じる日々でした。

愛情もたくさんもらって大切に育ててもらった実感があります。

だからこそ、この愛を失いたくない、という感情は人一倍強いと思います。

高本さん:自分にとって大切な今を守るために。この幸せがこの先もずっと変わらないように、続くように私が大きく変わりたい。

そんな想いが原点なんですよね。

小学一年生の将来の夢は、「総理大臣」

——将来の夢は、どんなものでしたか?

高本さん:小学一年生のとき、将来の夢に「総理大臣」って書いていました(笑)。現実味はないんですけど、言っておいたら面白いやろうと思って。私、人生って結局、面白いか面白くないかだと思っているところがあって。合理的に考える部分もあるんですが、最後は「それ、面白いん?」というところで、面白い方に走っていきたい。総理大臣が、当時の私にとって一番おもろいやつだったんじゃないですかね(笑)。

バイトは掛け持ち4つ——「止まると死ぬマグロ」の学生時代

——学生時代は、どんなふうに過ごしていたんですか?

高本さん:止まると死んでしまうマグロみたいに、常に人とのつながりを感じていたくて動き回っているタイプでした。そこで生まれる価値に、すごく生きがいを感じていました。だからバイトは四つ掛け持ちして、四つともバイトリーダーをしてぶん回していましたね。朝八時に出勤して翌朝二時まで働いて、三時間だけ家に寝に帰って、また八時から出勤する。それを40連勤とか。そんな生活でした。周りからは社畜の鏡と言われてましたが、シンプルにバイトがめちゃめちゃ楽しかったですね。

高本さん:稼いだお金で、11カ国くらい海外を回ったりバックパックもしていました。新しいものも好きなんですけど、既存のつながりを大事にするためにお金を生み出すことにも、すごく興味があったんです。大学ライフ自体はあんまり楽しんでいなくて、サークルにも入らず、とにかく社会と触れ合うことを早め早めに取り入れていました。

——起業を意識し始めたのは、いつ頃だったんですか?

高本さん:小学校の時の将来の夢を総理大臣と掲げているような変な少女だったんで、ぼんやり「社長」も同じ類のおもろそうな人だなとは思ってましたが、その時は本質的なものではなかったですね。ただ目立ちたいとか、軽いものだったと思います。

ちゃんと意識しだしたのは、高三、進路を決めるくらいのタイミングですね。

決められたルールの中で生きることに、すごく退屈さを感じていました。それを自分で作れるって理想的だな、これって起業なんだ、と思ったんです。ただ、大学では遊び呆けてしまって、下積みをすっかり忘れていたんですよ(笑)。

「一回、銀行で働いたら?」——起業を志して選んだ、みずほ銀行

——大学卒業後は、一度就職されていますよね。

高本さん:いよいよ起業したいとなったとき、人脈もお金もスキルもない。どうしようと悩んで、知り合いの経営者に相談したんです。そうしたら「一回、銀行で働いたら?」と言われました。銀行員ほど経営者が窓口になってくれる職業はないし、決算書を読み解いて、企業がどんな戦略を取っているかを間近で見られる。外部の人間に決算書を見せてくれるのは、銀行員くらいですから。

高本さん:ファイナンスの知識を勉強しながらお金がもらえて、経営者との人脈もできる。それはいいなと思いました。だから起業するまでの期間を2年と決めて、親や周りにも宣言して、みずほ銀行に就職しました。

2020年4月、香川で味わった孤独

——ところが、入社のタイミングが……。

高本さん:入社が2020年の4月でした。コロナが来た年なんですよ。大学の卒業式もなく、会社の入社式もなく、日本中の会社がどうしていいか分からず、うごめいていた時期でした。そんな時に配属先は「香川県」と言われて。私、家族と友達が大好きすぎて、大学のときは往復5時間を下宿せず実家を出なかったくらいなのに、急に身一つで、誰も知らない香川へ行くことになったんです。

高本さん:出社もできないから、会社の人とのつながりも当然作れないし顔も知らない状態です。タブレットだけ家に届けられて「研修動画を見ててください」と言われるだけ。定時の17時になれば、やることがなくなる。お金は使う場所がないからどんどん貯まるし、時間もある。過去の私が見たら「最高の状況じゃん」と思うはずなんです。でも、一番肝心なつながりが、まったくなかった。

お金も時間もあった。でも、幸せじゃなかった——"余裕"の発見

——それは、どんな時期でしたか?

高本さん:人生でいちばん、生きがいを見失った時期でした。何のために生きているのか、働く意味って何なのか、ずっと考えていました。SNSがあるから誰とでも繋がれるじゃん、という意見もありますけど、見えているのに身近に感じられないつながりって、余計に孤独を生むんですよ。心を病んでいく友達も、周りにいました。

高本さん:そのときにすごく感じたんです。お金があっても、時間があっても、それを共有できる仲間やつながりがなかったら、幸せは感じられない、と気づきました。だったら、この領域で起業したい。良質なつながりを作ることで、心の豊かさを生み出したい。コロナと、もともとの起業意欲が重なって、そして今のビジネスパートナーとの出会いもあり、ここから動き出しました。

——本業がある中で、何から始めていったんですか?

高本さん:とにかく人に会いまくりました。でも当時はコロナで、街に誰も歩いていない、バイオハザードみたいな状態でした。かいくぐって会える方法は何だろうと考えて、マッチングアプリに登録している経営者に会いに行ったりもしました(笑)。向こうは恋愛目的なので継続的な関係にはならないんですけど、とにかく会って、話を聞いていました。

高本さん:そうしているうちに、私と同じ境遇の人にたくさん出会ったんです。大阪や東京にいたのに地方支店に配属されて、孤独を感じている同世代でした。繋いで、繋げて、繋げて……とやっていくうちに、コミュニティができていきました。振り返ると、香川の生活が人生でいちばん楽しかったと思えるくらいなんです。つながりが、あったからです。

意思決定は、面白いか面白くないか——コミュニティ事業からの出発

——会社を辞めるとき、どんな意思決定だったんですか?

高本さん:意思決定は、面白いか面白くないか。シンプルにそれだけです(笑)。ちょっとでも「やりたい」と思ったなら、もうそっちが正しいんじゃないか、と思っています。

高本さん:最初に始めたのは、コミュニティを作る支援でした。組織って、お給料という対価があるから拘束力があるけれど、コミュニティは楽しくなかったらすぐ離れていく。だからこそ、いかに「ここにいることが楽しい」と思わせるか、その場作りのテクニックがたくさん要るんです。そこをお伝えするコミュニティコンサルの事業をしていました。

組織開発とAI、二つの"余裕"——いまのForTwo

——コミュニティ事業から、今の二軸へはどう繋がったんですか?

高本さん:コミュニティ事業はストック型で、ちょっとずつ積み上がる分、爆発的なインパクトはなかったんです。会社としてスケールさせるには、別のキャッシュポイントが要る。ちょうどAIがグワッと来ていて、特にリスキリングの領域には大きなキャッシュが生まれるモデルがあった。メンバーも、正社員やインターン生が増えていて、その子たちにお給料を払い続けるにはお金の余裕が要る。そこからAI事業を始めた、という流れです。

高本さん:組織開発事業はコミュニティ事業の進化になります。多くの人の繋がりの豊かさに貢献できるとしたら「はたらく環境」だと思いました。コミュニティという抽象的なものから、会社という単位に限定して事業を進めだしたことで今の2軸ができあがりましたね。

エンゲージメントを、5つの指標で可視化する

——組織開発の事業は、具体的にどんなサービスなんですか?

高本さん:社員さんにアンケートを回答してもらい、今の心の状態をデータで可視化することで離職を防ぎ、活躍を促進する組織成長のご支援です。

高本さん:データで指標化すると、現状組織としてどこが弱くてどこが強いかが出ますし、個人個人が会社に対して今どんな不満があるのか、どんなモチベーションなのかが見えます。

その上で誰にどんな1on1面談をすればいいか、聞くことが分かるため、ネガティブを防ぎ、ポジティブを増幅させることが可能です。

人事のインフラを、私たちが担っているイメージです。

AI研修と、常駐型の「AI-OPS」

——AI事業のほうは、どうですか?

高本さん:一つはAI研修です。リスキリング助成金を活用して、社員さんのAIリテラシーを高め、業務を効率化していく。もう一つがAI-OPSという事業で、AIのプロフェッショナルが実際に企業さんに入るんです。経営者さんって、どこをどう効率化できるか自体が分からない、というケースが多い。たとえば見積書を毎回手書きで転記して作っているなら、「AIを入れれば一発ですよね」と提案します。今の状態を整理した上で提案して、仕組みごと整える。そういう事業です。

四つの余裕を、すべて——ForTwoが見据える未来

——これから目指す、理想的な未来を教えてください。

高本さん:ビジョンである「〇〇への余裕を作る」に尽きます。「これ面白い、やりたい」と思ったのに、「お金がないから今は無理だな」「忙しくて着手できないな」と、何かが弊害になってやりたい気持ちが消される瞬間って、大人になるほど増えていく。その状態をなくすために、すべての余裕を作っておきたいんです。いまは二つですが、これから健康とお金の余裕も、事業として立てていきたい。

高本さん:ForTwoという社名の由来もそこにあります。お客様のため、誰かのためももちろん大事です。でも、それよりまず大事なのは自分なんです。私にとっても、あなたにとっても。自分自身が余裕を持った上で、それを周りに波及させていく。自分が満たされていない中で周りを幸せにできる人はいないですからね。この考え方を、すごく大切にしています。

——原動力は、どこにあるんですか?

高本さん:「常に今がおもろいと思える状態を生きる」という価値観を持っています。自己実現を達成する瞬間もいいんですけど、そこに向かうプロセスでこの瞬間も「今が主役」だと感じながら生きる。今が本当に幸せだと思える状態を生き続けるために、この会社が存在している。その仕組を回し続けること自体が、私の存在意義であり、そう思えていることが私の原動力ですね。

「ちょっとでもやりたいと思ったなら、それが正しい」——読者へ

——最後に、周りの方々へ感謝のメッセージをいただけますか?

高本さん:香川で、身近に信じられる人がいなくなった瞬間に、自分を見失いかけたんです。太陽に照らされていた感覚から、完全に真っ暗で光が無くなったんです。

そのとき「自分は、すごく人に生かされていたんだな」と気づきました。価値って、一人で生み出せるものは何一つない。日常を生きていること自体も、生かされている感覚がすごくあるんです。だから、今関わってくださっているという、その事実だけで本当に感謝しています。何かしてくれなくてもいいんですよ。関わってくれている、それだけでいいんです。

高本さん:実は、起業して半年で子どもを授かって、今は三歳と一歳の子がいるんです。子育てをしながら事業をやっている姿が、女性の自己実現の一つのロールモデルというと大変おこがましいですが、どこかで頑張る誰かを元気づける要素になれたらいいな、とも思っています。二兎追うものしか二兎得れず。

——では、一歩を踏み出せずにいる読者に、人生の先輩として一言お願いします。

高本さん:面白いと思う方に、進めばいい。それだけです。考えれば逆の選択肢もあるし、何でもある。でも、ちょっとでも「やりたい」と思ったんだったら、もうその方向が正しいんじゃないですか。感情を殺さず、まっすぐ進む。それが、人生を幸せに生きるということだと思うんです。

お金でも、時間でもない。人が本当に幸せを感じるために欠かせない"余裕"を、高本さんはコロナ禍の孤独の底で掴み取った。組織開発とAI——手段は違えど、その先にあるのはいつも、誰かが「やりたい」と思える余白をつくること。面白い方へ、まっすぐに。ForTwoの挑戦は、これからも続いていく。

会社概要

会社名:株式会社ForTwo(フォートゥー)

代表取締役:高本実祐

設立:2022年

事業内容:組織開発・HR事業(従業員エンゲージメントのデータ可視化・コンサルティング/伴走支援)、AI事業(リスキリング助成金を活用したAI研修、常駐型のAI-OPS)

取材:河本龍真 文:佐藤大遥(株式会社One Rep)

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