2026.05.23 / ぶち上げインタビュー
【ぶち上げインタビュー】「〜したい」で生きていけーーAI時代の「人間の時代」を、地方から創る男。株式会社Lirem 代表取締役 籔内龍介さん

「起業家とか、自営業とか、家系にマジで一人もいなかったんです。山口県宇部市の、ど真ん中の家庭から、爆誕した感じですね」
この記事の要点
- 01経営者とは無縁の家庭で育ちながらも、宇部工業高等専門学校4年生のときにDJ社長(レペゼン地球)の動画をきっかけに「社長になる」と決意。
- 02今期は売上1億円を目標に掲げ、フルコミット7名・業務委託やアルバイトを含めると約20名の組織を率いる。
- 03「正社員雇用」という制度をあえて取り払い、独自の働き方「CCWS(Co-Creation Work Style/共創する働き方)」を提唱している26歳の経営者に、その軌跡と未来を聞いた。
※ 人生ぶち上げch編集部が本文をもとに整理した独自の要約です。
「起業家とか、自営業とか、家系にマジで一人もいなかったんです。山口県宇部市の、ど真ん中の家庭から、爆誕した感じですね」
愛知県豊橋市発のスタートアップ・株式会社Lirem。代表取締役社長の籔内龍介さんは、起業家創出プログラム「火-Okoshi(ひおこし)」、新規事業開発インターンシップ「燠火(おきび)」、大手企業向けに0→1のイノベーション人財を地方イノベーション研修を通して発掘研修する狼煙事業の3本の事業を軸に、地域中小企業のイノベーション創出と次世代教育に挑んでいる。以下、籔内さん。
2000年、山口県宇部市生まれ。両親は工場勤務と訪問介護士。経営者とは無縁の家庭で育ちながらも、宇部工業高等専門学校4年生のときにDJ社長(レペゼン地球)の動画をきっかけに「社長になる」と決意。豊橋技術科学大学に編入後、コロナ禍を追い風に起業活動へと突進した。2021年10月、ビジコン受賞の賞金を元手に株式会社Liremを設立し、代表取締役に就任。
現在、会社は5期目。今期は売上1億円を目標に掲げ、フルコミット7名・業務委託やアルバイトを含めると約20名の組織を率いる。「正社員雇用」という制度をあえて取り払い、独自の働き方「CCWS(Co-Creation Work Style/共創する働き方)」を提唱している26歳の経営者に、その軌跡と未来を聞いた。
会社名:株式会社Lirem(リレム)
役職:代表取締役社長
氏名:籔内 龍介(やぶうち りゅうすけ)
「火-Okoshi」「燠火」「狼煙」——3つの事業で、地方から起業家を生み出す
学生と地域企業の「共創」で、新規事業をかたちにする
——まず、株式会社Liremの事業内容について教えてください。
籔内さん:いま、大きく3つの事業を展開しています。**「火-Okoshi(ひおこし)」**は、起業家を志す学生向けの1ヶ月間の育成プログラムで、合宿やメンタリングを通して「自分は本当は何をしたいのか」というミッション・ビジョンの確立に伴走する事業です。これは1年前に一般社団法人として分社化して、いまは協業関係でやっています。
メインの主力事業として今いちばん注力しているのが**「燠火(おきび)」**ですね。地方の中小・中堅企業さんの新規事業立ち上げや新商品開発を、意欲的な学生チームと一緒に進めていく長期実践型のプログラムです。学生さんがプロジェクトの実働を担って、起業家がメンターに入り、僕らが全体をマネジメントするという形を組んでいます。
そして「狼煙」は、“会社の既存部署”の中に眠る0→1人財を地域企業の0→1現場で掘り起こし、「裏登竜門」として企業の企画、新規事業、DX推進部署へ送り戻す事業です。
——「燠火」では、具体的にどういった企業さんとご一緒されているのでしょうか。
籔内さん:本当に地場の、40人から100人規模の経営者さんが多いです。たとえば「油の卸売を30年やってきました」とか、「解体業と建設業をやっています」みたいな、いわゆるレガシーな産業の会社さん。化石燃料を扱われている企業さんなんかは、今後どうしても需要が落ちていく構造のなかで、新しい売上の柱をつくる必要がある。そこに学生チームが入ってヒアリングを重ね、リニューアル提案や新規事業の立ち上げを一気に進めていくんです。
BtoCだと、施設の大型リニューアル提案。BtoBだと、農家さん向けや製造業向けに、すでに持っているコネクションを活かして新しいシステムや商品を作って販売していく。既存のリソース・技術・ノウハウを活かしながら、新しいサービスや事業をかたちにしていく仕事ですね。
山口県宇部市の少年が、社長を志した理由
「社会人つまんねえ」——その一言が、運命を変えた
——籔内さんご自身の幼少期からのご経歴を聞かせてください。
籔内さん:出身は山口県宇部市で、両親は経営者でも自営業でもなく、父は工場勤務、母は訪問介護士という家庭で育ちました。家系にマジで起業家が一人もいなかったんで、僕はもう「謎から爆誕した」という感じです(笑)。
幼少期は野球をやっていましたね。リーダーとかキャプテンを表立ってやるタイプではなかったんですけど、なぜかスライディングキャッチみたいな、注目を浴びるプレーが大好きで。中学3年ぐらいのタイミングで、いじられたり、それで人を笑顔にできるのが面白いなと気づいてから、リーダーや学級委員長みたいな役割を担うようになっていきました。
——その後、宇部工業高等専門学校に進学されますね。
籔内さん:はい、5年間の学校なので、4年生のときに中学の同級生がもう社会人になっていたんですよ。彼らに会って話を聞くと、「社会人マジでつまんねえ」「楽しいのは週末しかない」って言うんですよ。それを聞いた瞬間、「あ、自分2年後に社会人になるのか……マジで絶望だわ」って、本気でお先真っ暗な気持ちになりました。
DJ社長の40分の動画——人生のスイッチが入った瞬間
「自分らしく生きるって、めっちゃおもしれえ」
——絶望のあと、何が転機になったのでしょうか。
籔内さん:これがもう、めちゃくちゃ単純なんですけど(笑)、起業している人のYouTube動画を観たんですよ。**DJ社長(レペゼン地球)**の40分の動画。観終わったときに、「うわ、社長かっけえ」「自分らしく生きるって、めっちゃおもしれえ」「やりたいことやっていきてえ」って、もう完全にスイッチが入りました。そこから、「社長になる」って決めました。
——具体的にはどう動いたんですか。
籔内さん:高専卒業後に、愛知県豊橋市の豊橋技術科学大学に3年次編入して。ちょうど編入のタイミングがコロナ禍だったので、オンライン授業ばかりで時間ができたのをいいことに、起業に向けて動きまくりました。
エンジニアの同級生を集めて、カフェや喫茶店で人がつながれる掲示板アプリをつくって、2021年6月にリリース。その4ヶ月後、ビジネスコンテストで賞をいただいて、その賞金を元手に株式会社Liremを設立しました。それが2021年10月、僕が大学在学中のことです。
並行して起業サークルや学生団体も立ち上げて、地元のベンチャー企業で長期インターンもやって。学生時代は、もうとにかく動きまくっていましたね。
メンバーに給料が払えない——22歳、もやしとうどんの日々
キャッシュフローも知らずに、20人の組織を抱えていた
——起業されてから、これまでで一番きつかった瞬間はいつですか。
籔内さん:あんまり過去の挫折を思い出せないタイプなんですけど(笑)……それでも振り返ると、起業して1年目、2年目、つまり22歳ぐらいのときが一番きつかったですね。
仲間集めはめっちゃ得意だったんで、アルバイトやインターン生をどんどん集めて、20人ぐらいの組織にしていたんですよ。中学の同級生が会社を辞めて入ってくれたりもしました。なのに、僕は経営のことを何も知らなくて。キャッシュフローという概念すら、ちゃんと管理できていなかったんです。
ふと振り返ったら、「あれ、今月メンバーに給料払えないぞ」って気づくんです。当然、自分の生活費も底をつく。もやしとうどんで毎日食いつなぐような生活を、本当にしていました。「払えない、どうしよう」を毎日考えていた時期は、いま思い出しても絶望的でしたね。
「言えない」孤独を超えて
信頼するメンバーに、頭を下げた夜
——どうやってその状況を乗り越えたんですか。
籔内さん:メンバーに「給料払えない」って、なかなか言えないんですよ。だから、信頼している一部のメンバーだけにこっそり相談して、「他のメンバーに払う給料分、ちょっと貸してくれない?」ってお願いしたりしていました。1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後に必ず返す、と。
「経営者は孤独」ってよく言いますけど、本当にそうです。当時の自分は、いまよりももっと弱みを出せなかったと思います。だからこそ、信頼してお金を貸してくれたメンバーには、いまでも本当に感謝していますね。
CCWS——「正社員雇用」を捨てた、新しい働き方
自分の意志で、報酬も役職も決められる組織へ
——現在のLiremは、独自の組織形態を採られているそうですね。
籔内さん:はい、社内で**「CCWS(Co-Creation Work Style/共創する働き方)」**と呼んでいるテーマがあって、その実現のために、いわゆる「正社員雇用」をなくしました。
なぜかというと、いまの社会って、会社にミッションや事業はあるけれど、個人としての意志がなくて、ほとんど労働になってしまっている人が多いと思うんです。それが僕は納得できなくて会社を立ち上げた部分もあって。だからこそ、それぞれのメンバーが自分の意志を持ち、自分なりの人生があるなかで、会社のミッションと重ねて働くスタイルをつくりたかった。
最終的には、報酬も役職も全部メンバー自身が決められる組織にしたいと思っているんです。それが本来「自分の人生は自分で意思決定する」ということだと思っていて。
最初はもちろん正社員雇用のままで、自分で報酬や働き方を選べる仕組みをつくれないかと頑張ったんですよ。労務に詳しい人も入れて。でも、「労働基準法の枠組みのなかでは、根本的にやりたいことができない」って気づいたんです。だったら一回、全部リセットしてしまおうと。それで正社員雇用そのものをやめました。
Live a life you will remember——社名に込めた想い
AVICIIの歌詞が、Liremの原点
——「Lirem」という社名の由来を教えてください。
籔内さん:これは、僕がもともと大好きなアーティスト**AVICIIの「The Nights」という曲のサビの歌詞、「Live a life you will remember(記憶に残る人生を送れ)」から取っています。これをぎゅっとして、「Lirem」**という社名にしたんです。
会社のミッションも、ここから来ています。「記憶に残る人生を送る人で溢れる世界を創る」。Liremを通して関わるメンバーも、サービスを届けるお客さまも、みんなが「自分の意志」で、自分らしく、記憶に残る人生を送れる——そんな起点や環境、価値を提供していきたいんです。
だから僕は、メンバーに対しても「もしいま自分の意志と違うと感じるなら、Liremを離れてもいい」というスタンスを取っています。やってもやらなくてもいい人生だからこそ、せっかく面白く生きていきたいなら一緒にやろうぜ、と。そういう関係性で、メンバーには接しています。
強みは、地方の「生の声」を聞ける場所
北海道、青森、千葉、愛知、関西——各地に張った根
——他社との差別化ポイント、Liremさんならではの強みはどこにありますか。
籔内さん:圧倒的に、意欲的な地方の学生さんとのコネクション、そしてその学生さんを通じてつながる地方企業・大学・自治体とのネットワークですね。「火-Okoshi」を通じて、いま北海道、青森、千葉、愛知、関西で活動していて、各エリアの自治体や大学、民間企業さんとのコネクションを直接、地場で持っているんです。
新規事業や新商品をつくるときって、結局**「生の一次情報」を取りに行けるかどうか**がいちばん大事だと思っているんです。直接その人の課題感を聞きに行くこと。僕らはそれができる人たちのコネクションを大量に持っているので、ニーズ調査や仮説検証を一気に進められる。これは、地場に張ってきたからこその強みです。
AI時代の「人間の時代」を、地方から創る
2100年、東京にしか人がいない国にしないために
——会社として、これから目指している未来を聞かせてください。
籔内さん:僕らが掲げているのは、「AIが浸透した次元で、人が人らしく生きられる時代を創る」ということです。
AIやテクノロジーが進化していくなかで、いわゆる労働みたいなものは、向こう5年、10年でどんどん代替されていく。じゃあその先で、人はどう生きていくのか。やっぱり「自分の意志」「自分はこうしたい」という内発的な動機を持っていない人は、生きている意味を見失ってしまう時代になると思うんです。
そして同時にいま、日本は人口減少と東京一極集中が進んでいます。明治時代まで日本の人口は3,000万〜4,000万人で、いまの1億2,000万人から、2100年頃にはまたその水準まで戻ると言われている。このまま都市集中が続いたら、2100年の日本は、東京にしか人が住んでいない国になってしまう。地方ではインフラが成り立たなくなって、人が住めなくなる。
それって、すごく面白くない日本だと僕は思うんです。だから僕らは、**「地方」**をテーマに据えました。地方に人が分散し、地方で人らしく、自分らしく生きられる環境をつくる。地方の中でイノベーションを起こして、産業が成り立つ仕組みを残していく。関係人口や移住を通じて分散を促していく。教育と産業の両輪で、その世界を実装していきたいんです。
「〜したい」で生きていけ——一歩を止める言い訳を超えて
生きてれば、人生は意外と幸せだ
——最後に、これから一歩を踏み出したい若い世代へ、メッセージをお願いします。
籔内さん:何かやろうとしたとき、「いまのままじゃダメだ」「どうせ自分にはできない」って、一歩を止める理由はめちゃくちゃ出てくると思うんです。
でも僕は、人生どんな状態になっても、生きていれば結局幸せだと思っているんですよ。極端な話、ホームレス生活になったとしても、人生は意外と幸せなんじゃないかなって。だから、「怖い」と思うことがあっても、案外そんなことないよ、って伝えたいです。
これからの時代、労働のあり方が変わっていくなかで、「〜しなければならない」じゃなくて、「〜したい」という本音の気持ちで生きていくことが大事になってくる。日々の生活のなかで「これしたいな」「これおもろいな」と思うことに、小さくても少しずつ行動していけば、人生は自分らしい選択でかたちづくられていくと思うんです。
それが結果的に事業として成長したり、誰かの課題解決につながったりする。だから、気楽に、面白いと思った一歩から踏み出してもらえたらうれしいです。
ともに「火」を起こしてくれる仲間を
自分を持っている人と、未来を創りたい
——どんな方と一緒に働きたいですか。
籔内さん:自分自身が「自分らしく生きていきたい」「自分の本音で生きていきたい」と思っていて、かつそれを通して人や社会に対して影響を与えていきたい——「社会がこう良くなったらいいよね」と本気で考えて、一緒に動いていきたい。そういう想いを持っている人と、ご一緒したいですね。
「自分を持っている人」、もしくは「持とうとしている人」。そんな方と、これから一緒に走っていきたいです。
【会社概要】
会社名 株式会社Lirem
設立 2021年10月15日
代表 代表取締役社長 籔内 龍介
事業内容 起業家創出プログラム事業「火-Okoshi」/新規事業開発インターンシップ事業「燠火(OKIBI)」/大手企業向けに0→1のイノベーション人財を地方イノベーション研修を通して発掘研修する狼煙事業/企業・教育機関向け研修事業/イベント事業
所在地 愛知県豊橋市小池町字角田5番地
取材・文:河本龍真(株式会社One Rep)
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