2026.05.24ぶち上げインタビュー

ぶち上げインタビュー「一人ひとりの色を、価値に変えたい」元看護師が"全身シャンプー"と"福祉事業"で、暮らしを楽に書き換える。新井芙和麗さん

「一人ひとりの色を、価値に変えたい」元看護師が"全身シャンプー"と"福祉事業"で、暮らしを楽に書き換える。新井芙和麗さん

「みんなが進んでない方向に、行きたがるんですよ」

この記事の要点

  • 01埼玉県の静かな少女が、看護師となり、二年で病棟を離れ、大手美容クリニックも辞めて起業した。
  • 02今回はそんな新井さんに、起業のきっかけ、これまで一番きつかった瞬間、そして「これから、どんな会社をつくりたいか」までをじっくりお伺いした。
  • 03その「上がいる環境から抜けたい」という気持ちが、起業のいちばんの原点かもしれません。

※ 人生ぶち上げch編集部が本文をもとに整理した独自の要約です。

「みんなが進んでない方向に、行きたがるんですよ」

代表の新井芙和麗さんは、髪・体すべてを一本で洗える次世代オールインワンシャンプー『RAKU』を企画・販売する一方で、地元埼玉県、久喜市で就労継続支援B型事業所を新たに立ち上げる。

埼玉県の静かな少女が、看護師となり、二年で病棟を離れ、大手美容クリニックも辞めて起業した。原動力は「上司がいる環境から、抜け出したかった」という素直な感覚と、「みんながやらない方を選ぶ」という昔からの性格だった。シャンプーひとつに込めた「暮らしを"楽(RAKU)"にする」という想い。そして、身内が障害を持つという家庭環境から芽生えた、福祉への眼差し。新井さんが二つの事業を並行して走らせるその裏側には、ひとつの強い信念がある。

今回はそんな新井さんに、起業のきっかけ、これまで一番きつかった瞬間、そして「これから、どんな会社をつくりたいか」までをじっくりお伺いした。

会社名:株式会社Rebatons(リバトンズ)

役職:代表取締役

氏名:新井 芙和麗(あらい・ふわり)

「全身シャンプー」と「福祉」——二つの事業で日常を"楽"にする

いま、取り組んでいること

——まずは、新井さんが今手がけている事業について教えてください。

新井さん:ひとつは『RAKU(ラク)』というブランドで、髪・体をこれ一本で洗えるオールインワンシャンプーを販売しています。今は主にホテルや温浴施設、サウナ、スポーツジムなど、宿泊・施設向け(ToB)と、個人のお客さま向け(ToC)の両方で展開しています。

もうひとつが、福祉の就労継続支援事業です。地元の埼玉県、久喜市で、就労継続支援B型の事業所を新しく立ち上げます。2026年6月のオープン予定日(就労継続支援B型といろ久喜)に向けて、いまはちょうど準備の最終段階ですね。一般就職が難しい障害のある方に、無理のない仕事を提供する場所をつくっています。

事業内容としては、食品の梱包作業や、AIを活用したパソコン作業が中心です。働いた分の対価をきちんとお渡しする、という仕組みになります。

「みんなが進まない方向に、行きたい」——埼玉県の静かな少女が起業に至るまで

幼少期から看護師、そして起業まで

——幼少期はどんな子どもだったんですか?

新井さん:もう、めっちゃ静かでしたね(笑)。生まれは埼玉県加須市で、共働きの家だったので、お隣に住んでいたおじいちゃん・おばあちゃんに預けられて育ちました。注射を打たれてもぐずらないような、本当に大人びた子だったと思います。

物事を真ん中に飛び込んで体験するというより、外から見てるタイプでしたね。みんなが遊んでいても、自分は混ざらず、ちょっと離れたところから眺めている。そういう感じでした。

中学校では、まわりの目をあまり気にしないところがあって。クラスで好かれていない子と仲良くしていて、自分まで嫌われるようになった時期もあったんですけど、「私が仲良くしたいんだから、いいじゃん」みたいな感じで。

高校は公立高校に進んで、サッカー部のマネージャーを3年やりました。バイトと部活と遊びで、毎日ぎっしり予定が詰まっていましたね。

——そこから看護師の道に進まれたんですね。

新井さん:高二・高三のあたりで、なんとなく医療系に行きたいなと思い始めて。母から「じゃあ看護師がいいんじゃない?」と言われて、茨城県の看護専門学校に進みました。

ちょっと事情があって一年休学した時期もあって。最初に入学した友達と離れてしまったのは精神的にしんどかったです。でも、無事ストレートで国家試験に合格して、看護師免許を取りました。

最初は日赤系列の大きな病院で約二年間、病棟看護師として勤めました。同期にも恵まれて、本当に楽しく勉強させてもらえる環境でした。そこから、「美容の現場で看護師をやりたい」と思って、TCB(東京中央美容外科)に転職したんです。

ただ、思ったのと全然違って。脱毛などの予約制の仕事って、とにかく時間で動かないといけない。病棟のときは自分でケアの内容や時間を考えて動けたのに、それができなくて、すごく窮屈だったんです。

——そこから「自分で事業をやろう」と思ったきっかけは?

新井さん:「あ、私もう、上司がいる環境からは抜けたいな」って強く思ったんですよね。看護師の仕事自体は今でも好きなんです。人の世話をするのが、もともと好きで、生きがいでもあって。でも、看護師って「お医者さんの指示がないと動けない。」「こうしたらもっといいのに」が通せない場面が、どうしても多くて。

その「上がいる環境から抜けたい」という気持ちが、起業のいちばんの原点かもしれません。

「みんながやってない方が気になる」——なぜ全身シャンプーだったのか

看護師時代の現場の景色から生まれた商品

——起業の領域として、なぜ"全身シャンプー"だったんですか?

新井さん:当時の自分のまわりに、女性経営者って、エステ・脱毛・ホワイトニングをやっている人が本当に多くて。物販をやっている人がほぼいなかったんですよ。

で、もともと「みんなが進んでない方向に行きたがる」性格なんです(笑)。だったら物販やってみようと。じゃあ何を売るか考えたときに、看護師時代の景色をふと思い出して。

病棟勤務のとき、入浴介助って結構あるんですよ。体が不自由な方が、お風呂で体を洗いにくそうにしている場面を、何度も目にしていて。「あ、髪も体も、これ一本で洗えるシャンプーがあればいいのに」って、ずっと心の片隅に引っかかっていたんです。

ただ、本当に介護が必要な方向けの商品だと、価格を抑える必要があるし、高齢の方ってSNSをほぼやられていない。届ける手段が難しくなる。一方で、私自身がサウナとか温泉、お風呂が大好きで。サウナや温浴施設が好きな人たちに向けた一本があれば、サウナーの人にも、ジムに行く人にも、忙しくて時短したい人にも届くんじゃないか、と。

そうやってたどり着いたのが、いまの『RAKU』という全身シャンプーです。試作品づくりに約1年かかって、なかなか自分の納得いくものができなかったんですが、最終的に形にできた。「髪も体も、ギシギシにならず、トリートメントなしでも使える」というところまで仕上げました。

「ToBは温浴・サウナだけ」——美容室を選ばなかった理由

全身洗える施設にしか営業をかけていない

——B to Bの卸先を、温浴施設やジムに絞っているのが面白いですね。

新井さん:そうなんです。「シャンプー」と聞くと、多くの方が美容室を想像すると思うんですが、美容室では結局、髪しか洗わないじゃないですか。だったら、全身洗えるシャンプーである意味がない。だから美容室にはあえて営業をかけていなくて、サウナ・温浴施設・ホテル・ジムなど、お客さまが全身を洗える場所だけに絞っているんです。

商品ができてからも、営業はずっと自分一人でやっていました。一件一件、施設に足を運んで。思うように進まない場面もたくさんありましたが、その積み重ねが今に繋がっていると感じています。

業務委託で人を入れてみた時期もあるんですが、「自分がいなくても会社が回る体制をつくる」というのは、思った以上に難しくて。今は紹介を中心に動いています。広告を大きくかけているわけではないですが、サウナ・温浴施設・ホテル・ジムなどに置いていただき、ご縁が広がっています。

「専門学校で一年遅れた経験」——精神的にいちばんしんどかった瞬間

挫折は、まだ「これから」かもしれない

——これまでで、いちばん精神的にきつかった瞬間ってありましたか?

新井さん:大きな挫折は、実はビジネスではまだそんなにないんです。よく経営者の方が「騙された」「お金を取られた」って話しているのを聞きますけど、自分はまだ経験がなくて。今後あるかもしれないですけどね(笑)。

でも、振り返って一番精神的にしんどかったのは、看護の専門学校で一年遅れたときです。最初に一緒に入学した友達と離れてしまって。一年休学して、また戻って勉強し直すのは、今思っても本当にしんどかった。それでも、結果としてストレートで看護師免許を取れたので、今となっては大事な経験ですね。

ビジネスでの挫折はまだないですけど、これからもずっとなしでいけたらいいな、って思っています(笑)。

「身内が、障害者だった」——福祉事業へとつながった原点

家庭環境

——RAKUと並行して、なぜ福祉の事業も立ち上げようと思ったんですか?

新井さん:いちばん大きいのは、家庭環境ですね。身内が障害を持っていて。家のなかでずっと身近に感じてきた領域だったので、自然と気になるようになっていきました。

事業所は、就労継続支援のなかでもA型・B型・移行型とあるなかで、症状が比較的重い方が対象となるB型を選びました。身内に障害のある人がいた経験から、いちばん必要な場所はそこだと感じたからです。

事業所の名前は、埼玉県のマスコット「コバトン」と「再生」の意味を掛け合わせています。「会社名のRebatonsも、その思いから付けました」。

「一人ひとりの色を、価値に変えたい」——目指す会社のかたち

全員が同じ方向を向いている会社にしたい

——今後、どんな会社にしていきたいですか?

新井さん:いちばん根っこにあるのが、「一人ひとりの色を、価値に変えたい」というミッションです。

障害のある方って、本当に一人ひとりの個性がすごく強いんですよ。その色を価値に変える。利用者さんにとっては自分自身の成長になるし、事業側にとっては売上・利益になる。両方の価値に、同じ場所から繋がっていけたらいいなと思っています。

これからは正社員も雇いながら進めていく段階に入るので、まずは「働く人たちが安心して働ける、働きやすい職場」をつくっていきたいです。

私にとって、いい会社だなと思えるのは、「全員が同じ方向を向いている会社」です。金銭面や数字の目標だけを追うんじゃなくて、会社としての意思や考え方をしっかり共有して、同じ方向性を持って前向きに働けること。そこを大事にしていきたいですね。

働いている人が「楽しい」と感じたり、「自分の役割にやりがいを感じる」と思える環境。一人ひとりが無理なく力を発揮して、互いに支え合いながら安心して働ける。そんな循環の積み重ねの先に、長く続く、まわりからも信頼してもらえる温かい会社をつくっていけたら、と思っています。

「行動しながら、考える」——一歩を踏み出せない人へ

勉強してから動くのではなく、動きながら整える

——最後に、これから一歩を踏み出したい読者にメッセージをお願いします。

新井さん:私が大事にしているのは、「行動しながら考える」ということですね。

勉強してから動くんじゃなくて、行動しながら整える。そっちのほうが、物事が進むスピードがぜんぜん早いなと思います。

一歩目を、そんなに重たく考えなくていい。踏み出してから考えてみる。そういう感覚を、ちょっとだけ持ってもらえたら嬉しいです。

会社名:株式会社Rebatons

設立:2025年12月

代表取締役:新井 芙和麗

事業内容:就労継続支援B型事業

所在地:埼玉県久喜市本町8丁目5-48

取材・文:黒澤優一(株式会社One Rep)

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